占星学と戒


 
前回飲酒に関する占星学の見方について述べたついでに、占星学について意見を述べて大来たいと思います。時々「ブッダは占いを禁じているのに、なぜあなたは占いをするのか」と質問や苦言を頂戴することがあるからです。
 
初めにブッダが占いを禁じているというのは誤解だと思います。比丘に対して大戒で「占いによって何らかの報酬を得る」ことを禁止しているのは、庶民に衣食住薬を依存する身でありながら、何であれ職業のようなことをするのを禁じている例の一つであり、世俗の知識である占いを在家に禁じているのではありません。
 
例えば祈祷などの儀式、宝石占いなど物品の状態で占う、戦争を占う、星占いで火事や地震などを占い、豊作や不作を占い、吉祥時を占うこと、祭祀をすること、薬の調合、手術や小児科医などの行為をすることを禁じています。http://space.geocities.jp/tammashart/siseitai/4-12-1.html
これを見て分かるように、比丘がこれらの知識を職業として使うのを禁止するだけで、これらの知識や技術は悪いと言われている訳ではないと思います。薬の調合というのは内科医であり、手術は外科医、そして小児科医の行為を禁じていますが、在家なら、それらは仏教徒が営んでも何の問題もない職業であるように、占いも一般の知識、あるいは職業として悪と言われているのではありません。
 
これらの大戒は、在家が生活するためにどのような知識を使うかについて、占いや医学や薬学の知識は悪いと言われているのではなく、比丘でありながら在家がするような仕事をして報酬や謝礼を受け取ってはいけないという趣旨の戒です。
 
また星占いについては「月食で占い、日食で占い、恒星食で占い、月、太陽、惑星がどこを進行している、変則的な進行をしていると占い、流星や隕石、大火事、地震、雷鳴などがあると占い、(運の)上昇、下降、停滞を占い、月や太陽や星を清浄にするとこういう結果になると、このように占います」と言われているので、当時の占星術は現在の占星学とは比較にならないほど単純で、亀甲を初めいろんな物品で占う占いと大差ない物だったのかもしれません。
 
占星学を非難する方は、週刊誌などに載っている星占いしか見たことがなく、占星学がどのようなものか良くご存じないのではないかと思います。私も昔はそのような物しか見たことがなかったので占星術は少女の遊びだと思っていましたが、宇宙工学博士の糸川英雄氏が書いた占星学の本を読んで認識が変わりました。
 
占星学は世界のすべての物を12に分類して、すべての物事を読みます。占星学によって、それまでの知識では知ることができない非常に多くのことを知ることができるのが、不思議でもあり、楽しくもありました。その時は原因は星にあり、人はその運命を受け取ると理解しました。
 
そしてブッダダンマを知って因果の法則、カンマの法則と占星学の知識を撚り合わせると、誕生日時の星はその人の過去に行った行為、カンマ、行為をする傾向、習性を表していると分かりました。一般の占い師は結果の部分を予言として言います。つまり火星の凶座相があれば「事故や大病になる」あるいは「なりやすい」と予言しますが、私は「この人は怒りっぽい習性がある」と見ます。そのように習性を見て治す努力をすれば、事故や大病や火事、盗難などの結果を防止できます。雑誌にあるような星占いは、本当の占星学の何百分の一くらいでしかないと言わせていただきます。
 
前回の飲酒も、酒類海王星で、海王星の座相が悪い人は、欺瞞、詐欺、謀略、浮気、不道徳、隠れた敵など、曖昧模糊とした不明な状態、ぼんやりした状態などと関わりがありますが、それには酒、薬物、薬剤、涙(嘆き)などに関わる繰り返し作った原因があります。このように惑星や観測点が示す結果から、それらの結果を生じさせる習性も読むことができるので、自分自身の心の管理に非常に役に立ちます。
 
人は自分で自分を理解していないもので、私は占星学を始めるまで、自分が怒りっぽい性質であることも自覚していませんでした。自覚していないことを直すことは出来ないので、自分の性質を善くして行くには、まず自分自身を知ることから始めなくてはなりません。
しかし面と向かって自分の欠点を教えてくれる人はなく、また身近な人に言われると良い気分がしないので受け入れ難いですが、ホロスコープを見れば素直に受け入れることができます。(中には当たっていないと否定して受け入れない人もいますが)。
 
自分の悪い習性がまだ結果として現れていないうちは、ほとんどの人は「自分は善い人だ、他人より優れている」と思っていますが、その人のホロスコープを見ると、直すべき欠点もたくさんあり、それを知って直せれば最強になることができます。
 
家庭内で自己中心的なために、晩年に家族から見捨てられる星のある人が、それを知らずに我儘を言い続け、晩年に家庭内で孤立し、家庭が崩壊していく例を数えきれないほど見ています。若い時に知る機会があり、信じて改める努力をすれば、星は運命ではなく、因果を説いているので、改善できたかもしれないのに。
 
今私にとって占星学は、どんな行為がどんな結果の原因か、カンマの結果を知る上で欠かせない計測器であり、自分と他人の、本人も自覚できない深い意識や習性を知る道具であり、カンマの法則を検証するための辞書です。身体の状態を知る体温計や血圧計、CTスキャンなどのように、過去と現在の心の状態,原因と結果の因果関係を知る道具、計測器です。

だから占星学で自分の性格を学んだことがない人は、健康診断を受けたことがない人が自分の体の状態を客観的に知らないように、自分の性格、習性について何も知らない人だと思います。
 
誕生した日の太陽の星座だけで恋愛運などの予言をするような、単純で未熟な物ではありません。在家がブッダの教えである真理を検証するためにこのような学問知識を使うことに、ブッダは苦言を呈されないと確信しています。
 
プッタタート師も占い嫌いだったようですが、それも未熟な占いをする先輩比丘を見ておられたからで、インタビューで星占いの話になった時、師は占いを否定していて、質問者が「占星学は天文学を人間に投影したものです」と言うと「それなら科学です」と答え、受け入れる姿勢を見せています。もしプッタタート師と会話する機会があり、占星学について説明させていただく機会があれば、師は「自分を知ることは、自分を正しくすることの初め」とおっしゃって関心を持たれたに違いないと思います。占星学にもピンからキリまでありますが、騙されやすい類のレベルでなく、物質でないだけで、体系的な理論がある非常に便利で有益な道具だからです。