貴乃花親方の破滅

昨年末の日馬富士の暴行事件をめぐる貴乃花親方の行動を、相撲界の不正を正す正義の行動で、角界の隠れている問題が明らかになる流れになるだろうと見ていましたが、理事長選挙や貴公俊の暴力問題など、親方を益々窮地に追い込む成り行きに変わり、結果として相撲協会から圧力があったのか無かったのかも明らかでないまま、貴乃花親方は年寄りを引退し、名門である部屋を消滅させました。
 
 今年の夏以降の親方は、理性で考えると言うより、推測や思い込みなどで自ら曲解して、決断をしたように見えました。私はこの頃になってようやく、これは親方が長年母親を拒絶していることのカンマの威力で、いろんな事件や出来事が連続して起き、親方の人生は次第に破滅に追い込まれているのではないかと思い至りました。
 
カンマが結果を出す場合は不可解な部分(縁)が多々あり、本人も訳が分からない成り行きになります。シリアで武装勢力に拘束されて最近解放されたフリージャーナリストが、案内人でない男に付いて行ったのは「私の判断ミス」と言っていましたが、重要な局面で正しい判断ができないのは、カンマの威力のように見えます。重要であると分かっているのに、その人の普通の注意力や理性が使えないのですから。
 
同じように普段の判断力が使えないことに男女の仲があり、恋は盲目と言うくらい正しい判断ができなくなること、あるいは信じられないほど早い決断をすることもありますが、これもカンマが急かせるからです。
 
ブッダは「恩知らずは破滅する」と教えられています。両親はすべての人にとって最高に恩のある人で、親殺しは阿羅漢を殺すのと同じ無間地獄に落ちます。だから「子にとって親は阿羅漢」です。命を与え、体を与え、食べること、歩くこと、話すこと、何でも人間らしく育ってきたのは、親が根気よくすべてを教えてくれたからです。
 
このような見方に同意しない方もいるかもしれませんが、ブッダの教えのすべてはブッダ個人の考えでなく、自然を観察して見えた自然の法則であり、「恩知らずは破滅する」というのも自然の法則の一つです。
 
疑問がある方は、特に親孝行な人、特に親不孝な人の例を探して、観察して見てください。芸能界には片親で育った人が多いですが、それは、子供のころから何かにつけて「親に楽をさせてやるため」「親に恩返しをするため」という意業を数えきれないほどたくさん作っているので、それらが十分貯まると善いカンマの結果として大成功します。
 
貴乃花が尊敬する双葉山は、幼い時に母を亡くし、一人親であった父が片目を失って仕事ができなくなったので、日常的に親を援け、そしてもっと親を援けたい思いを、長年胸に抱いて生活していたのでしょう。その意業の蓄積が偉業に繋がったと見ます。

反対の親不孝で破滅した人の例を探すのは簡単ではありません。介護していた父の死後、次第に衰退して亡くなった山口美江はその例かもしれません。彼女は後の講演で介護の日々を「地獄」と言っているので、たぶん介護される父にとっても地獄であり、静かな日常ではなかったと推測できます。

介護から解放された後、芸能界復帰もせず、その他の仕事をすることもなく、体調不良が続いた後、五十一歳という若さで孤独死しました。介護の日々で、親に対してたくさんの恩を忘れた言葉や考えという業がなければ、そのように経過する年齢ではありません。

もう一人伝染病で亡くなった野口英世ですが、伝染病による死も不道徳(特に恩知らず)なカンマの結果と言われています。伝記によると野口英世は若い頃から放蕩癖があり、支援者の恩を繰り返し裏切り、婚約者の持参金を使ってアメリカ留学の資本にし、五年後にその金を返済して婚約解消しています。このようなカンマの蓄積が伝染病による死という結果を招いたと私は見ます。
 
忍耐や努力で一度は成功を収めても、恩知らずなカンマが十分なだけあれば、成功は長続きせず破滅します。

だから何をするにも親孝行は基盤です。親を怨んだり悲しませたりする行為は、「恩知らずは破滅する」という教えがあるように、奇妙な成り行きによって破滅します。普通は親が亡くなった後、次第に衰退して死に至りますが、親方の場合親不孝の時間が長く、ここで一度結果を出す十分なカンマが蓄積されたのでしょう。