不邪淫戒の本当の意味

仏教の五戒に不邪淫戒という戒があります。不殺生、不偸盗、不妄語、不飲酒は、文字を見れば大体意味が分かります。しかし不邪淫は、多くの人が「不倫をしてはいけない」と理解していますが、文字の意味と、戒その物の意味は大分違います。

 

ブッダは不邪淫戒について『母が愛護し、父が愛護し、兄弟が愛護し、姉妹が愛護し、親戚が愛護し、ダンマが愛護する女性、夫がある女性、借金のかたの範囲にいる女性、婚約をしている女性に対して、それらの間違った振る舞いをしない』と言われています。だから親が許可した娘なら、あるいは人妻でも夫が許可すれば、そうした人と関係を持つことは禁じてないので「不倫をしてはいけない」という意味はありません。

 

男性に話しているので「それらの女性に対して」と言っていますが、男性にとっても同じで、要旨は「誰かが大切に愛護し、自分の物として愛して惜しむ気持ちがあるもの」何でも、それらの物を犯さないという意味です。

 

この意味を念頭に観察すると、三十年くらい住んでいた宅地地の近所で、旦那が浮気をしたことがあるお宅は、どの家の主婦も綺麗好きで、いつでも家がきちんと片付いているタイプの人でした。家を片付けておくのが好きな人、散らかっているのが嫌いな性分の人は、思い切りよく捨てる術を心得ています。しかし時には、旦那や子供、舅や姑が大切にしている物(大抵は貨幣価値の少ない物)を、無断で捨ててしまうことがあると思われます。

 

実際にそれらのお宅の姑さんが「鍋を嫁に捨てられた」とか、「お櫃を捨てられた」と嘆くのを聞いたことがあります。そうした行為、つまり不邪淫戒に触れる行為(カンマ)が十分蓄積されると、その主婦が大事にしている物や人(旦那)が、他の人に取られるのだと思います。

 

前述の奥さんの一人は、愛用車に塗料で落書きをされ、引っかき傷を付けられたことがありました。今考えると、原因が良く見えます。その奥さんは「他人が大切にしている物を侵害した(捨てた)」ことが原因で、何者かに自分の愛車を傷つけられたのです。

 

我が家でも昔、私が宿根草を植えていた鉢を、草の部分が枯れたので、子どもが勝手に掘り返して、自分が植えたい物を植えてしまったことがあります。その子は子供の時に兄の雑誌の一部を切り取ったことがありました。それからしばらくして、恋人に新しい恋人ができて別れました。こんな小さな仕業も、このように大きな結果を生じさせます。

 

浮気をしたことがある身近な人や有名人の例を観察すると、浮気をしたから浮気をし返されると言う例は滅多になく、夫だけが浮気をするケースが多いです。そして全部片付け好きな奥さんで、家が散らかっているお宅、あるいは普通に片付いているお宅は、旦那が浮気をしたという話は聞きません。大会社の社長などが好く浮気をするのは、そうした人の奥様は綺麗好きな人が多く、家がいつもきちんと片付いているからかも知れません。

 

「不邪淫戒は不倫をしないことだから、貞節な私には関係ない」と思わないで、世の奥様方、あるいは配偶者や恋人のある方は、他人が大切にしている物、特に金銭的価値がない、使い古した他人の愛用品などを捨てる際は、金銭的には無価値に見える品物でも、所有者にとってどれだけ価値があるか分からないので、勝手に処分しないよう、つまり他人の愛惜の思いを尊重するよう、くれぐれも注意が必要です

 

何も考えずに他人が大切にしている物を処分することが原因で、自分が人生で一番大切にしている恋人や配偶者を誰かに奪われる出来事が起こります。そしてそれらの出来事に遭遇した人は、何が本当の原因か知らないので、業の結果を出す縁である人(つまり夫)を恨み、再発を防ぐ方法を知らず、まだ原因を作り続けているかもしれません。

 

このように見ると、不邪淫戒は誰の生活の中にもいつでも犯す機会があり、正しく理解して注意しなければ、恐ろしい落とし穴を自分で掘ることになりかねないと分かります。