輪廻による民族の大移動

前回の「ブッダの仏教がない日本に、仏教文化がある不思議」と、八年前の「仏教という名のヒンドゥー教」に、「インド北部がイスラム教になっていた時代に、それ以前まで繰り返しインドに生まれていた人が生まれる場所を失って、たくさん日本に生まれた」と書きました。その時代に、インドに生まれる縁を失った人の中には、中国やインドシナ半島スリランカに生まれた人もたくさんいたと思います。

 

南伝仏教の地域に大乗仏教を信奉する王が現れたのは、そのようなことの表れと見えます。当然庶民にも、出家にも、過去世でヒンドゥー教だった人は少なくなかったと推測します。だから仏教に仏像や読経や様々な宗教儀式が取り入れられ、テーラワーダに戻った後も、今日まで宗教儀式が残っています。

 

大乗でも南伝仏教でも、仏教国の至る所に観音信仰が興ったのも、「輪廻によるインド人の大移動」による現象だと思います。観音はヒンドゥーの神様だからです。

 

このような「輪廻による民族の大移動」は他にもないか、洞察して見ると、同じく一時代イスラム教に支配されたスペインでは、キリスト教の人はイスラム教徒の家に生まれる縁がないので、宗教的縛りが弱い朝鮮半島を選んで、たくさん移動して来たと見えました。

 

アジアの国々の民俗衣装はタイトな直線のシルエットばかりですが、朝鮮民族だけは西洋のスカートのようにギャザーがたっぷりのチマ(スカート)で、その下に昔の西洋女性のように、モンペのような下履きを履いています。

 

伝統遊びのシーソーで、チマを履いた女性が二メートルくらい跳んでいる(筆者の個人的イメージです)のを見て、びっくりしました。日本女性が伝統衣装で跳び上がる姿は想像できなかったので、その違いに驚きました。

 

国民的民謡のアリランは三拍子で、三拍子のアジア民謡は聞いたことがありません。韓流ドラマを見ると、昔の官吏が鳥の羽根を飾った帽子を被っていましたが、それも西洋の帽子に酷似していました。

 

スペインと朝鮮の共通点を探してみると、小皿料理があります。韓国では、何を注文しても、注文した料理の他に、十種類くらいの小皿に載った惣菜がついて来ます。西洋では、煮込みや焼き物など、幾つかの料理を個々の皿に盛り合わせ、小皿は見えません。スペインの小皿料理は、一度移動して朝鮮半島に生まれ、何度かそこで繰り返して生きた人が、イスラム教国家が消滅した後、再びスペインに「輪廻による民族の大移動」で戻った人たちによって、スペインで独自の発展をしたのではないかと思います。

 

朝鮮半島のお寺の仏像は、三頭身くらいの可愛らしい姿をしています。これは仏教徒の人口が少なかったことを表していると思いますが、スペインの田舎のマリア像にも、三頭身くらいのものをテレビで見たことがあります。

 

もちろんスペインからポルトガルやイタリア、フランスなどの周辺国に輪廻による移動をした人が最も多いと思いますが、それは近隣による文化的影響と見られ、輪廻による移動と見る人はいません。

 

しかし朝鮮半島とスペイン、日本とインドのように離れた国では、輪廻でなければ多くの国民の移動はあり得ず、人の移動なしに文化の流入はありません。